2016年12月7日にザ・ランドリーズのサードアルバム『Synanthrope』が発売されてから,
早や半年が経ちましたが、遅ればせながら今回はレコーディングで使用させていただいた代々木上原のスタジオ“サウンド・ラボ・オワゾ”にて、ザ・ランドリーズのレコーディングに欠かすことのできないふたり、ランドリーズのメンバーとは学生時代からの同級生でもあり、現在はプロのレコーディングエンジニアとして活躍中の山田晋平氏と、山田氏とはエンジニアとしての後輩であり“サウンド・ラボ・オワゾ”の専属エンジニアでもある藤田敦氏に今回のアルバムレコーディングを振り返ってもらいつつ、使用機材、レコーディング時の裏話などを語ってもらいました。(インタビュアー:渡辺真(ザ・ランドリーズの裏方さん))
The Laundries(ザ・ランドリーズ)
木村孝之(Vo)遠山幸生(Gt)吉田テリー慈(Ba)久田稔(Dr)久行望(Key)
1992年結成。木村とは地元中学の同級生だった現レコーディングエンジニアの山田氏が、通っていた専門学校の同級生である遠山、テリー、久田を木村に紹介したのが今のザ・ランドリーズの原点。一昨年、やはり彼らと同じ専門学校の同級生だった久行が加わり現在の5人体制となる。(インタビューを担当した渡辺(ザ・ランドリーズの裏方さん)も同じ専門学校の同級生)
――まず最初にファーストアルバム『THE LAUNDRIES』のレコーディングをしたときのことを聞かせてください。ほとんど覚えてないと思うけど(笑)。
山田 ファーストは僕も少しやったけど、ほとんど藤田が作業してましたね。
藤田 そうですね。ほとんど僕でした。
山田 あの頃はまだプロツールス(現在、プロのレコーディング現場で業界標準となっているAvid社のデジタル・オーディオ・ワークステーション)じゃなかったんですよ。
藤田 3348(SONY PCM3348(デジタルマルチトラックテープレコーダー))とADAT(ALESIS社 デジタルマルチトラックレコーダー)でやってましたね。
山田 僕はバラードの曲やったのは覚えてますね。MUR(SONY MU-R201(デジタルリバーブ))使ったの覚えてます。
――アルバムとは別に、トラキャン(Trashcan Sinatras)のカバーはどうでしたか?
藤田 あれは僕が録って、外国人のエンジニアのミックスでしたね。
山田 そうそう。朝までかかって大変だったっていう(笑)。
――セカンドアルバムの『NATALIE』は?
山田 セカンドはほとんど今回(『Synanthrope』)と同じ感じですよ。藤田の録音が少し多かったくらいで作業的にはほぼ半々。今回のサードは結果的に僕の録音が多くなったのかな?でも録りもミックスもほぼ半々。
――今回の『Synanthrope』ですが、4年くらい前にセカンド作って今回サードアルバムを作るにあたってメンバーと方向性とか作業の進め方に関して打ち合わせみたいなものはありましたか?
山田 んー。ないですね。藤田なんかあった?
藤田 ないです(即答)。
山田 まず曲も知らなかったし、デモも貰ってないですからね(笑)。
藤田 曲が出来上がってない状態でリズム録りしてましたね。スケッチしながら録ってたって感じ。
――最初は久田とテリーのリズム隊から録りはじめたんですよね?
山田 そうですね。リズム隊のベーシック→ギター→ボーカルとキーボードみたいな流れだったかな。
――リズム隊の録音で気をつけてたことはありますか?機材のセッティングとか。
山田 ほとんどいつもやってる事と変わらないけど、仕事よりは冒険してますね。普段のセッションだと失敗したらアレだけど、このメンツなら問題ない(笑)。でも、使うマイクにしても結果、自分の好きなセッティングになっていくんですよ。
――マイクはどうやって決めてるんですか?
山田 まず藤田がセレクトしてくれたセッティングで、なんか違うなってときに僕が変えてます。
※ここで山田氏が、とあるメモを見ているので…
藤田 そのメモなんですか?
山田 今回、録音と録音の間が結構空いたりしたじゃない?だからいろいろ忘れないように遠山からのメール全部プリントアウトしてて、それ見てたんだけどレコーディングの進め方とかのことはあんま書いてないのね(笑)。
――その時々の遠山の溢れ出てくるアイデアに対して臨機応変に対応しながら進めてましたよね。
山田 そうですね。まあ録音に関して言うと、マイクはいろいろ試してみたけど基本的に変わったことはやってないんですよ。
――山田氏の基本セッティングってことですか?
山田 そうです。
――リズム録りに関しては曲とか彼らの演奏によってマイクセッティングも少しづつ変えると?
山田 曲ってよりは曲調ですね。テンポが一番大きいです。マイク変えるのって。テンポが遅いときと速いときで使うマイクが変わってくる気がします。
――それはどういうことですか?
山田 それは言葉にできないですね。感覚だから(笑)、スネアの長さをどう録るか的な。そう今回、久田のドラムの録音ではトップにオニギリみたいなマイク(Coles4038)を多用してます。
――あのオニギリみたいのってダイナミックマイクじゃないんですか?(と、聞いたあとに気付いたんですがドラムのトップにダイナミックマイクはまず使わないです。)
山田 リボン。オールドのリボンマイクです。あれいいですよ!某レジェンドの録音でも使ってますけどバッチリです!
藤田 でもあれってオールドって言ってもビンテージマイクじゃないんですよね。
山田 現行モデル。昔からあって、ずっと作り続けてるんです。
藤田 ビートルズの時代からモデルチェンジしてないっていう。だからビートルズのレコーディング風景とか見るとリンゴ・スターのトップにも立ってるし、ツェッペリンのレコーディングでもボンゾの上に立ってるし。
――やっぱりオールドマイクって最近のマイクと比べて音が違ったりするんですか?
藤田 このColes4038で言うと、当時のものと現行モデルとでは厳密に言えば音は違うと思うけど基本の設計は昔から変わってないらしいですよ。なので衝撃に弱いっていう。最近のリボンマイクって比較的衝撃に強く作られてるからアンプの前に立てても意外と平気なんですよ。風圧(音圧)にも耐えられる。だけど今回使ってたColesとかは衝撃に弱いんで音源に対して斜めに立てないと壊れちゃう。
――テリーのベース録りはどうでしたか?
山田 そこにある新しい機材があまりにも音が良くて。
――コンプ?
山田 そう。レトロ(RETRO STA-LEVEL gold edition)のコンプですね。最初は藤田がベース録ってて、2日間で5曲くらい録ったんだっけ?
藤田 そうですね。
山田 それを僕があとで何曲か録り直したんですけど、すでにベースはいい音で録れてたからベースに関しては藤田のセッティングそのままでずっと録ってました(笑)。いつも僕が使ってる33609(NEVE33609(コンプレッサー))は全く使わなかったですね。
――ベースはアンプの音をマイクで録って、ラインでも録ってるんですか?
山田 はい。両方。マイクとラインを合わせた曲もあるし、マイクだけの曲もあるし。
――コンプってマイクとラインの両方に?
山田 そうです。本当は両方同じコンプがいいから、いつもはステレオコンプの33609を使ってるんですけど…。えーと、どうしたんだっけ?
藤田 LA-3(UREI LA-3A)とレトロ(RETRO STA-LEVEL gold edition)ですね。マイクがLA-3でラインがレトロ。
――ベースはコンプだけ?
山田 そうです。EQはしませんね。あ、違う。1073でEQかけてます。
――1073とは?
山田 ニーヴ(NEVE)のHA(ヘッドアンプ)です。
藤田 ベース→マイク(ライン)→HA→コンプ→プロツールスって繋いでますね。
――プロツールスのほうでも曲によってEQかけたりアタマ少し抑えたり(コンプかけたり)するんですか?
藤田 やりますね。ミックスのときとか。
――それはプラグインで?
藤田 そうですね。
――プラグインていわゆるシミュレーターですよね?
藤田 そうです。そういえばこのスタジオにあるアウトボードの機材は全部シミュレートされてますね。ていうかこんなの記事にして誰が楽しいんですか?(爆笑)まあ機材のことで言うと、このスタジオはいわゆる普通の商業スタジオにある機材というよりは、もうちょっとビンテージ寄りの機材を揃えてて音が太く録れるような方向性でやってますね。
――それは藤田君の好み?
藤田 僕の趣味もありますけど、バンドサウンドを録るのにちょうどいい機材を集めてるってところでは、エンジニアとバンド側の感覚が一致するのでバンドを録るには最適な機材セレクトとハコであるような気がします。今ある商業スタジオの機材って80年代以降の機材が多いので、ハイファイできれいな音なんだけど割と音が細い印象があって…。ここはどっちかっていうと年代ものの機材を揃えてますね。プラス現代的な使えそうな機材も取り入れてる。そうすると古いものと新しいものとのバランスが取れてエンジニアとしてはサウンドのコントロールがしやすい。
――『NATALIE』から『Synanthrope』までそこそこ間が空いてましたが、今回のレコーディングをはじめたときの印象は?
山田 彼ら久しぶりのレコーディングだったんで録音の感覚を取り戻すまでにちょっと時間が掛かったってのはありますね。でも面白いもので慣れてくると入ってくる音も良くなるし上手くなるし。上手くなるとバランスも良くなるんですよ。HAで突っこんでコンプとかのメーター見てるとメーターの振れかたが全然変わってくる。キチッとした状態で音が入ってくるとコンプもしっかりかかってくれる。そうすると音も音のレベルも安定してくるんですね。そうすると彼らが聴いてるモニターも聴きやすくなるし演奏もしやすくなるんだと思います。彼らがそこまで考えてたかわからないけど(笑)。最初のうちは練習と本番で音っていうか音量が全然違ってたからそのへんのセッティングを合わせるのが大変なんだけれど、慣れてくるとほっといても一発でセッティングが決まったり(笑)。
――それは現場で見ててもわかりました(笑)。
山田 結局、録音って全ては出音なんですよ。
――リズムを録って、次は遠山のギターですけど。彼もいろいろやってましたよね?
山田 はい。苦労話といえば、使ってたギターアンプが割と特徴的なアンプで竿(ギター)を変えてもアンプが同じだから違いが分かりづらくて苦労しましたね。あれアンプなに使ってたんだっけ?
藤田 フェンダーのツインです。
――ツインリバーブ?
山田 そうです。遠山は今回ギターすごく重ねてダビングしてたじゃないですか。場合によってはその都度ギターも変えたりするんですけど、アンプは変わらないもんだから出てくる音のピークの帯域ってほとんど同じなんですよ。それが何本も重なると同じ帯域がいっぱい溜まっちゃう。そうするとあとですごく処理しづらいからギター重ねる度にマイク変えたりして音を作ってましたね。
――音作りといえば、遠山もエフェクターいろいろ使ってましたよね?
山田 はい。でもあんまり足元に店ひろげてる感じじゃなかったですね。レコーディングってライブみたいに音を足元で切り替える必要ないじゃないですか。音色ごとに録りわけるから。だからなるべく余計なエフェクターは繋がないで録ったほうが良い音で録れる。そういえばカラー(“Colour of My Soul”)で使ってたコーラス(モリダイラ楽器のエフェクターブランドNEXTのCHORUS・ π)、ボロボロの(笑)。あれSNSに写真あげたら先輩のエンジニア達から懐かしいと反響があって嬉しかったですね。
藤田 僕が録ってたときは割とリバーブかけてましたよ。
山田 かけ録りが多かったよね。
――その時はアンプの出音のみでエンジニア側ではほとんど手を加えないんですか?
山田 そうです。アンプからの音だけ。遠山は今回ラインでは一回も録ってないですね。
藤田 結構アンプに付いてるリバーブも使ってたし、飛び道具的なコンパクトエフェクターのリバーブなんかも使ってたかな。空間系のエフェクトは割と自分で音を作ってましたね、ディレイとかも。
――遠山の場合、やりながらどんどんアイデア出してくるから大変だったんじゃないですか?
山田 ですね。でも遠山がやってみたいと思ったことは全部やらせてあげるようにしてました。あいつのことだからやってみないと気が済まないだろうし、こっちとしてもどんな感じになるかやってみないとわからないですからね。そういう中で結構面白いものが出てきたりもするから。「今のいいねえ!」って自画自賛して勝手に進めてたりしてました、あの人(笑)。
――遠山のレコーディングは機材云々よりも彼自体の話のほうが全然面白い(笑)。
山田 そうですね(笑)。でも遠山はやっぱ上手いですよ。ああしてこうしてってこっちが言ったことをあっという間にやるから。たとえばリズムギターを録ってても、最初はあいつが思うように弾いてるじゃないですか。でも演ってる側と聴いてる側って捉え方が全然違う。それがたぶん本人たちも迷うところなんだろうけど…。それを一応判断してあげたりするんだけど、そのときにたとえば「もうちょっと大きくやったほうがいいよ」とか言うと「ああ晋平こういうことね」っていうようなプレイをあっという間にやるんですよ。もうプロかと思う。あいつとやってると楽しいですね。
――学生の頃からほんと上手かったけど、今回のアルバムは僕らが知ってる遠山色というか若い頃の遠山色が割と出てた気がしますね。
藤田 そういえば遠山さん今回はハコモノのギターあまり使ってなかったですね。ソリッドボディが多かった。
山田 前はハコモノの歪みなしに拘ってましたね。
藤田 鍵盤が入るからって言ってました。鍵盤が入るからソリッドボディにして、ハコモノだとそれだけで存在感が出ちゃうからって。だからハムバッカーもあまり使ってなかったんじゃないですかね。シングルPUにして「音のスキマ作ってた」って言ってましたね。
――鍵盤といえば久行のキーボード録りはどうでしたか?
山田 キーボードは最初、久行の家に行って打ち込み大会をやりました。
――キーボードに関しては久行が弾いたりプログラミングしたデータをもらって、それをスタジオで合わせるわけだけど、そのときにエンジニア側で音色を変えたりすることはあるんですか?
山田 それはないですね。EQかけるくらい。
――遠山と久行、メンバーとの間でやりとりがあってOKになったデータをプロツールスに取り込んでEQやコンプで音を作ってバランスを整えていくと。
山田 そうです。今回はオルガンとかピアノとかオーソドックスな音源がメインでしたからね。トリッキーな作業はしてないです(笑)。
――ボーカル録りはどうでしたか?木村くんのボーカルを録音するにあたって気をつけたことや機材のこだわりなどあれば。
山田 マイクは47TUBE(NEUMANN U47TUBE)。木村の歌にはこれがいちばん合うと思って使ってました。他に麻布のスタジオでも何曲かボーカルを録っていますが、そのときに251(TELEFUNKEN ELA-M251)、67(NEUMANN U67)、フラミンゴ(JZ Microphones Flamingo Standard)を使ってます。ボーカル録りも大変でしたよ。あいつ(木村)も普段の仕事が終わって20時~21時くらいから録り始めて23時くらいまでに1曲録り終えるって感じでしたからね。それから次にやる曲の歌詞合わせとかしたりして24時過ぎに終わるみたいな。
――木村くんの歌に対してバンドサウンドを考慮したうえでアドバイスしたりとかは?
山田 そこまでは考えてないですね。そこらへんのことは彼らが考えることであって、僕としては歌が前にくるかこないかだけ。まあ、全く考えないことはないですけど基本的には「良いテイクが録れるように」ってことを考えますね。歌いやすいマイクと環境作り。で、あのひとの歌はレンジが広いんですよ。声小さいと思ったらサビでどっかーん!て来たり(笑)。だから録るのすごく難しいんですよ実は。
――それはエンジニア側でリアルタイムに音量調節するんですか?アナログのフェーダーとかで。
山田 そうですね。プロツールスだとアナログのフェーダーはないからコンプのインプットのツマミをずっと握ったままで、Aメロ、Bメロ、サビの3段階くらいでレベルをその都度合わせてます。
――HAは固定でピークが大体同じになるようにっていうかコンプがちゃんと引っかかるようにエンジニア側が曲中でコンプの入力レベルを変えてると?
山田 そうです。Aメロでレベル合わせるとサビでどっかーん!て来たときにコンプメーターがびったーん!て張り付いちゃうから(笑)、そうすると歌が遠くなる。なるべく録りではコンピーなヴォーカルにならないように自然に聴こえるようにしつつ、サビでちょっとコンプが引っかかるようにしてます。歌の録音レベルをコンプのインプットをいじって合わせる感じ。それと、曲によってマイクは変えてるけどコンプ(UREI1176)とHA(NEVE1073)は変えないで録りました。ミックスではガッツリかけてる曲もあります。
――ミックスダウンはどうでしたか?
山田 録りの段階で仮歌が乗ってきた頃に、遠山からこの曲は誰が最終ミックスするかっていうのを告げられていたんですけど、ラフミックスに関しては基本的にそのときに担当してたエンジニアが作ってました。面白いのは、藤田はラフの段階でどんどん完成型に向けて持っていくんです。録りのときも出来上がりを想定して音を作っていっちゃう。だから録り終わった時点で大きいフェーダーは書かれてたりするんですよ。AメロこのくらいBメロ、サビはこれくらいみたいに。なのでダビングするたびに藤田のラフは完成型に近づいていく。だから遠山なんかは次のステップを考えやすいんじゃないですかね。僕は録った音を録ったまんまで残す。最終ミックスする前に全部リセットしちゃう。ラフミックスはあくまで録ったときの実力みたいな。
――山田氏はあとでまとめていくタイプ?
山田 そうです。僕のラフは素材そのままでバランス取るだけ。藤田は素材を軽く下ごしらえしながら進めていく。だから藤田のミックスはOKが出るのが早い(笑)。
――山田氏のミックスは自宅のプロツールスで?
山田 はい。家でチマチマやってました。
藤田 昔、マルチテープで録音してた時代って、ダビングとかでスタジオが変わるとコンソールや機材のセッティングをその都度イチから起ち上げなおさなきゃならなかったじゃないですか。その時に「なんかリズム録ったときと印象が違うんだけど…」とか「この前やったスタジオと印象違うね。」みたいな話をよくしてたんですけど、プロツールスになってから録音時のバランスがそのままセーブできて他のスタジオに行ってもそのデータがそのまま反映されるし、ミックスしてて「なんか変な方向に向いてきたな」ってなってもすぐに前のデータに戻せるんで以前にくらべてすごく効率的に作業ができますね。
山田 そういえば僕がミックスした曲でラフミックスを超えられなかった曲があるんですよ。
――???(笑)
山田 “Freedom”です。「あのままがいいよ。」って3回言われました(爆笑)。
――ラフミックスのほうがいいぞと?
山田 いちばん最初に遠山が「あれさ、ラフのまんまでいいんだけど」って。ミックスやんなくていいんだけどくらいなこと言われて(笑)。いやいや、まあやらせろと。で、聴かせたら「前のがいい」って(笑)。「じゃあこれは?」「いや前のがいい」って木村にも言われて(爆笑)。だから“Freedom”に関してはほとんどなにもしてないですね。さっきも言ったけど僕のラフミックスって録りっぱですからね、なかなかラフのまま録りっぱでOKっていうのも珍しい(笑)。それとエンジン(“The Engine”)のミックスは違う意味で1発OKだったんですよ。あれも実は僕自身ほぼなにもしてないっていう(笑)。
――エンジンもラフがOKミックスに?
山田 いやミックスダウンの段階でしっかり作り込んだんじゃなくて、ちゃちゃっとまとめてこんなかんじでいいんじゃねーの?って聴かせたら1発OKでした(笑)。やっぱりあの曲はいちばん最後に録ってるから僕も録り方がわかってたし、レコーディングに慣れたってのもあってメンバーもみんな上手いんですよ。だからそれができた。
――次、またアルバム作るとしたら?
山田 次?そうですね。彼ら今度、何周年て言ってましたっけ?
――25周年だそうです。
藤田 25周年!?(驚笑)すごいですね(笑)。
――四半世紀(笑)。結成当時、僕ら二十歳くらいでしたからね。
山田 実はランドリーズすごいんですよ。大御所バンド(笑)。まあ次を作るにしても、こっち側のやり方は変わらないでしょうね。みんなの置かれている状況を考えると今回みたいなやり方がベストなのかもしれない。ある程度自由が効くし町の練習スタジオで録ってるわけじゃないですからね(笑)。ほんと大手のレコード会社と遜色のない機材でレコーディングできるってすごいことだと思います。これはもう藤田のおかげですね。
――最後に山田氏、同級生としてランドリーズに対しての思いなどを。
山田 ランドリーズ?ただのライフワークですよ。
山田氏が言った“ただのライフワーク”という言葉。「なんだそれ?」と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、私にはとても心強い言葉に感じました。考えてみれば30年近い間、音楽を通した友人として仲間として、こうして音楽を作っていられることができ、しかもその音楽を待ち望んで聴いてくださるファンの方たちがいてくださるということがとても素晴らしく素敵なことであり、なによりありがたいことだなと思うと同時に、なかなかできる事ではないなと。
今後、ザ・ランドリーズは今まで以上にみなさんに音を届けられる場所を増やしていければと考えています。これからもザ・ランドリーズをよろしくお願いいたします。
ボーカル録りでの使用マイク。左からTELEFUNKEN ELA-M251、NEUMANN U-47TUBE、NEUMANN U67
ヘッドアンプNEVE1073
ドラムのトップに使用したオニギリみたいなマイクColes4038
AmpegベースキャビネットとAKG D112
ベースのライン録りで活躍したコンプレッサー、RETRO STA-LEVEL。上にはRETRO176、下にはUREI1178が見える。
同じくコンプレッサー群、上からUREI LA-3A、3台のUREI117、いちばん下にDistressor EL8
フェンダーツインリバーブの前に立てられた左からSENNHEISER e609、SHURE SM57、JOSEPHSON e22s
山田氏の先輩エンジニア達から懐かしいと反響があった遠山所有のコンパクトエフェクター、NEXT CHORUS・π
― 山田晋平氏 主な使用マイク ―
・Drums
Kick in → audio-technica ATM25
on → AKG D112
Sn top → SHURE SM57
bottom → SHURE SM57
Tom → AKG D112
H.H → AKG C451
Ride → AKG C451
Top → Coles 4038
Room → NEUMANN U87
・Bass
JOSEPHSON e22s
AKG D112
・E.Gt
JOSEPHSON e22s
SHURE SM57
SENNHEISER e609
SENNHEISER MD421
・Vocal
NEUMANN U47TUBE
NEUMANN U67
TELEFUNKEN ELA-M251
JZ Microphones Flamingo Standard